栄養注入用PEGチューブまたはPEJチューブの留置について

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本情報は、メモリアル・スローン・ケタリング(MSK)病院で経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)または経皮内視鏡的空腸瘻造設術(PEJ)を受ける患者さんのために、準備に役立つものです。

PEGは、胃の中に留置される経管栄養チューブです(図1左参照)。 チューブを胃に留置できない場合は、代わりにPEJチューブを小腸に留置することができます(図1右参照)。 PEJチューブは、小腸の2番目の部位である空腸に挿入されます。 チューブは、内視鏡的手術(担当医師が胃と小腸の内部を画像で確認できる手術)で挿入されます。

図1 PEGチューブの留置(左)とPEJチューブの留置(左)

図1 PEGチューブの留置(左)とPEJチューブの留置(右)

飲食による栄養摂取が不十分な場合に、チューブを使って栄養注入します。 食べることができる場合は、PEGチューブまたはPEJチューブ留置後も引き続き食べることが可能です。 必要な栄養を十分投与するためにチューブを使用します。

長期的な栄養サポートが必要な場合は、担当医師が胃に留置するPEGチューブを、目立たないボタン型に変更する場合があります(図2参照)。 同様に、小腸に留置するPEJを、目立たないボタン型に変更する場合があります。 いずれも、ボタンに栄養摂取のための注入アダプターを取り付けます。

図2 目立たないボタン型胃瘻

図2 目立たないボタン型胃瘻

施術の1週間前

管理栄養士に相談する

外来の管理栄養士が栄養チューブを入れる前に、ご連絡します。 管理栄養士は、患者さんが口を使って食事ができるかどうか、どんな種類のものを食べているか、どのくらいの量を食べているかなどを質問します。 また、経管栄養法の計画についても教えてくれます。 これには、使用する栄養剤の種類や、どのように投与するかなどが含まれます。 栄養チューブを通してご自分で栄養剤を投与する方法を教えてくれます。 栄養チューブを入れてから1~2日後に経過観察が行われます。 これは、患者さんがすべての医療用品を受け取り、栄養剤に耐えられるかどうかを確認するためです。

服用中の医薬品に関する確認

施術前に一部の医薬品の服用をやめなければならないことがあります。 以下にいくつかの一般的な例を示します。

  • 血液をさらさらにする医薬品を服用している場合は、服用をやめる時期について処方した医師にご相談ください。 該当する医薬品は、ワルファリン(クマディン®)、ダルテパリン(フラグミン®)、ヘパリン、チンザパリン(イノヘプ®)、エノキサパリン(ラブノックス®)、クロピドグレル(プラビックス®)、シロスタゾール(プレタル®)などです。
  • 糖尿病のためにインスリンや他の医薬品を服用している場合は、用量を変更しなければならないことがあります。 糖尿病薬を処方する担当医師に、施術当日の朝にしなければならないことを確認してください。

必要に応じて、医師から許可書を入手してください

自動植込み型除細動器(AICD)を使用している場合は、施術前に循環器医師(心臓専門医)から許可書を受け取らなければなりません。

家まで送ってくれる人の手配をする

施術後は、責任ある介護パートナーが自宅まで送ってくれる必要があります。責任ある介護パートナーとは、安全に帰宅するための助けをしてくれる人のことです。何か心配なことがあれば、看護チームに連絡できるようにしておくべきです。施術当日までに必ず計画を立ててください。

自宅まで送ってくれる責任ある介護パートナーがいない場合は、下記の機関に連絡してください。誰か送ってくれる人を手配してくれます。このサービスは有料で、ご自分で移動手段を用意する必要があります。タクシーや車のサービスを利用するのもいいのですが、やはり責任ある介護パートナーが一緒でないといけません。

ニューヨーク州の代理店 ニュージャージー州の代理店
VNS Health:888-735-8913 Caring People:877-227-4649
Caring People:877-227-4649  

 

施術の3日前

内視鏡検査準備室の看護師から連絡があります。 看護師は患者さんと一緒にこれらの指示を確認し、患者さんの既往歴について質問します。 また、看護師は服用中の医薬品を確認し、施術当日の朝に服用する医薬品について指示します。

施術の前日

手術時間にご注意ください

手術前日の午後2時以降に、スタッフからお電話を差し上げます。 手術が月曜日に予定されている場合は、その前の金曜日にお電話を差し上げます。 午後7時までに連絡がない場合は、212-639-5014までお電話ください。

その際、スタッフが手術のために何時に来ればいいかを教えてくれます。 また、どこに行けばいいのかも教えてくれます。

何らかの理由で手術をキャンセルしなければならない場合は、施術の予定を組んだ医師に連絡してください。

食事について

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手術前夜の深夜(午前0時)以降は何も食べないでください。 これには硬いキャンディーやガムも含まれます。

医療提供者から深夜よりも早い時間に食事を止めるように言われた場合は、その指示に従ってください。 人によっては、手術前にもっと長い時間絶食(食事をしないこと)する必要があります。

施術当日

飲み物について

深夜(午前0時)から到着時刻の2時間前までは、以下のリストにある水分のみを摂取することができます。 それ以外のものは食べたり飲んだりしないでください。 到着予定時刻の2時間前から何も飲まないでください。

  • 水。
  • 透明なアップルジュース、透明なグレープジュース、透明なクランベリージュース。
  • GatoradeまたはPowerade。
  • ブラックコーヒーまたはストレートティー。 砂糖は加えても構いません。 他には何も加えないでください。
    • 牛乳やクリーマーは一切加えないでください。 これには植物性ミルクやクリーマーも含まれます。
    • ハチミツは加えないでください。
    • フレーバーシロップは加えないでください。

糖尿病の方は、これらの飲み物に含まれる砂糖の量に注意してください。 砂糖不使用、低糖質、砂糖無添加の飲み物を取り入れると、血糖値をコントロールしやすくなります。

手術前に水分を補給しておくことは有効なので、のどが渇いたら飲んでください。 必要以上に飲まないでください。 手術中は点滴が行われます。

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到着予定時刻の2時間前から何も飲まないでください。 これには水も含まれます。

留意事項

  • 数口の水で、施術当日の朝に摂取するように指示された医薬品を服用してください。
  • ローション、クリーム、パウダー、デオドラント、メイクアップ、コロン、香水はつけないでください。
  • ピアスを含むすべての宝飾品は外してください。
  • クレジットカードや宝石などの貴重品はすべて自宅に置いてきてください。
  • コンタクトレンズを着用している方は、代わりに眼鏡を着用してください。

持参品

  • パッチやクリームを含む、自宅で服用している医薬品のリスト
  • 呼吸器疾患の医薬品(吸入器なども)、胸痛の医薬品、またはその両方の医薬品。
  • メガネやコンタクトレンズを入れるケース。
  • 用意されている場合は、医療委任状。

手術場所

施術は、これらの場所のいずれかで行われます。

David H. Koch Center
530 E. 74th St.
New York, NY 10021
エレベーターで8階までお越しください。

Endoscopy Suite at Memorial Hospital(MSKの病院本館)
1275 York Ave.(East 67thとEast 68thの間)
New York, NY 10065
エレベーター「B」で2階までお越しください。 右折し、ガラス扉からEndoscopy/Surgical(内視鏡・外科)Day Hospital Suiteに入ってください。

駐車場情報とMSKの全拠点への行き方については、www.msk.org/parkingをご覧ください

手続き

病院に到着すると、医師、看護師、その他の職員から、名前と生年月日の口述と記載を何度も求められます。 これは患者さんの安全のためです。 つまり、同一または似た名前の方が、同じ日に施術する可能性があるからです。

担当医師が施術について説明し、またどんな質問に対してもお答えします。 同意書(施術に同意し、危険を理解していることを表す書類)に署名するように求められます。

施術の時間になると、施術室に移動し、診察台に移されます。 心拍数、呼吸、血圧を監視するための装置が接続されます。 経鼻酸素吸入も行われます。 担当看護師が、歯を保護するために、患者さんの歯の上にマウスガードを取り付けます。

静脈注射で麻酔(患者さんを眠くするための薬)をかけます。 眠りに入ると、担当医師は内視鏡(カメラ付きチューブ)を口から食道を通して胃に、さらに小腸の入口部分まで挿入します。 そして、PEGチューブまたはPEJチューブを挿入する前に、胃と小腸をチェックします。

続いて、腹部の皮膚を小さく切開(外科的切開)し、その切開部に栄養チューブを通過させます。 栄養チューブは体外に約8〜12インチ(20〜30センチメートル)露出し、それを所定の位置に固定するため、小さなドレッシングテープ(包帯)を巻きます。 施術を終えると、担当医師は内視鏡を取り出します。

施術後

病院内

麻酔後回復室(PACU)に移動し、そこで担当看護師が患者さんの体温、心拍数、呼吸、血圧を監視します。 チューブを固定する包帯もチェックします。 完全に目覚めるまで、PACUに滞在します。

完全に目覚めると、担当栄養ナースプラクティショナー(NP)が自身による栄養注入方法、そして取り付けられたPEGチューブまたはPEJチューブの取り扱い方法をあなたと患者さんの介護者に説明します。 説明の間は、必ず介護者も同席して説明を聞いてください。 また、PEGチューブまたはPEJチューブによる栄養注入方法を説明した資料も提供されます。

担当栄養NPは、栄養チューブ造設で患者さんに発生する可能性のある副作用について説明し、参考としてHPN (Home Parenteral Nutrition) Complication Chartを提供します。 この表には、起こりうる合併症の治療方法に関するガイドラインが記載されています。 問題が生じた場合は、担当医師またはNPに連絡してください。

また、退院前の最初の数日間は、栄養チューブに必要な医療用品が供与されます。 その後、担当看護師が消耗品の業者への注文方法を説明します。 供与される医療用品は次の通りです。

  • 包帯交換に必要な医療用品:
    • ガーゼ 4インチ x 4 インチ(10㎝ x 10㎝)
    • テープまたはCath-Secure®
    • 酸化亜鉛(Desitin®)軟膏
    • ヨウ素(Betadine®)綿棒
  • チューブ洗浄用シリンジ

自宅

  • 喉に痛みを感じることがあります。 これは正常な反応で、1〜2日で改善します。
  • 最初の24〜48時間(1~2日間)は、切開部に不快感を感じることがあります。 その場合は、指示に従ってご利用の鎮痛剤を服用してください。
  • 手術施術48時間(2日間)後からシャワーを浴びることができます。 施術後2週間は浴槽につかったり、泳いだりしないでください。
  • PEGまたはPEJ挿入箇所の周囲に濃い緑色または黄色の排膿が生じることがあります。 少量の緑または黄色の排膿は正常な反応です。

PEGチューブまたはPEJチューブ周辺の皮膚のお手入れ

PEGチューブまたはPEJチューブの周りの皮膚をケアする必要があります。 以下の手順に従ってください。

皮膚をチェックします

栄養チューブの周りの皮膚を毎日チェックします。 発赤、腫れ、または膿の有無を確認します。 これらいずれかの症状がある場合は、担当医師またはNPに連絡してください。

施術後の最初の2日間は、これらの手順に従ってください。

  1. 古い包帯を外します
  2. 1日1回、ヨウ素綿棒でチューブの周りの皮膚をきれいにします
  3. 酸化亜鉛軟膏を塗ります
  4. 切開部を4 x 4ガーゼで覆います
  5. チューブが曲線を描く(図4参照)ように、テープで固定するか、Cath-Secureタブを使用して所定の位置に固定します
図4 チューブが曲線を描くようにする

図4 チューブが曲線を描くようにする

シャワーのとき皮膚をチェックします

施術後3日目以降は、シャワー時のチューブ周りの皮膚のケアを日課にしてください。

  1. シャワーを浴びる前に、チューブの周りの古い包帯を外してください。
  2. 石鹸と水で少なくとも20秒間その部分を洗ってください。 軽くたたいて乾かします。
  3. シャワー室から出たら、酸化亜鉛軟膏を塗ってください。
  4. チューブ挿入部を4 x 4のガーゼパッドで覆います。
  5. チューブが曲線を描くようにし、テープまたはCath-Secureタブで固定します。

PEGまたはPEJバンパーから皮膚を保護するため、酸化亜鉛軟膏を塗り、ガーゼを貼ってください。

分泌物から皮膚を保護するため、包帯が濡れたときは必ず交換してください。

お使いのチューブまたはボタンの洗浄

お使いのPEGチューブまたはPEJチューブを洗浄します

1日1回、もしくは担当医師の指示に従って、PEGまたはPEJチューブを洗い流してください。

  1. 必要な医療用品を準備します:
    • シリンジ 60mL、カテーテルチップ付きまたはENFitシリンジ付きのいずれか
    • カップに入れた60mLの水(室温または温かい普通の水道水)
    • ペーパータオル
  2. 温水と石鹸で20秒以上手を洗うか、手指消毒剤を手に塗布してください。
  3. 60 mLの水をシリンジ内に吸引します。
  4. チューブ末端のYポートの下にペーパータオルを敷き、排膿を吸収します。
  5. チューブをクランプします。
  6. シリンジをPEGまたはPEJチューブのYポートに接続します。
  7. チューブのクランプを外し、シリンダーのピストンをゆっくり押して水を注入します。
  8. チューブを再度クランプします。
  9. PEGまたはPEJチューブのYポートからシリンジを外します。
  10. シリンジは再利用できます。 チューブの洗浄ごとに、シリンジはぬるま湯ですすぎ、清潔なペーパータオルで乾かしてください。

お使いのチューブの洗浄に問題がある場合は、担当医師または看護師に連絡してください。

ボタン型胃瘻または空腸瘻のボタンの洗浄

ボタン型胃瘻または空腸瘻のボタンを1日1回、もしくは担当医師の指示に従って洗浄してください。

  1. 必要な医療用品を準備します:
    • シリンジ 60mL、カテーテルチップ付きまたはENFitシリンジ付きのいずれか
    • カップに入れた60mLの水(室温または温かい普通の水道水)
    • 栄養チューブアダプター
  2. 温水と石鹸で20秒以上手を洗うか、手指消毒剤を手に塗布してください。
  3. 60 mLの水をシリンジ内に吸引します。
  4. アダプターに水を注入してクランプします。
  5. アダプターをボタン型胃瘻または空腸瘻のボタンに接続します。
  6. シリンジをアダプターのYポートに接続します。
  7. アダプターのクランプを外し、シリンジのピストンをゆっくり押してアダプター内の水を押し込みます。
  8. アダプターを再度クランプします。
  9. お使いのアダプターのYポートからシリンジを外します。
  10. アダプターをボタン型胃瘻または空腸瘻のボタンから外します。
  11. シリンジは再利用できます。 ボタンの洗浄ごとに、シリンジはぬるま湯ですすぎ、清潔なペーパータオルで乾かしてください。

お使いのボタンの洗浄に問題がある場合は、担当医師または看護師に連絡してください。

医療従事者に連絡すべき場合

以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください。

  • 100.4° F(38° C)以上の発熱
  • 胸の痛みや息切れ
  • 激しい腹痛
  • 下痢(軟便または水様便)
  • 吐き気や嘔吐
  • めまいや脱力感
  • 継続する出血
  • 医薬品で改善しない切開部の痛み
  • PEGまたはPEJチューブとボタンの洗浄時の問題
  • 吸収するのにガーゼパッドが毎日5枚以上必要になる挿入部周辺の排膿
  • チューブの周りの発赤、腫れ、膿の兆候

最終更新日

月曜日, 7月 1, 2024