これは、化学療法による副作用の管理をするのに役立つ情報をまとめたものです。
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化学療法の副作用として起こりうる症状
看護師があなたと一緒にこの情報を確認し、起こりうる副作用をお伝えします。 これらの副作用のいくつか、または全てが起こるかもしれませんし、何も起こらないかもしれません。
倦怠感
倦怠感とは、普通以上に疲れたり、だるかったり、または元気が出ないような感じを指します。 化学療法治療による倦怠感は、小程度から極端な疲労感までさまざまあります。 倦怠感は時間の経過とともに急速に始まったり、徐々に強くなったりします。
管理方法
- 疲れを感じたら、休憩をとりましょう。 15分から20分の短い仮眠をとると良いでしょう。 たとえ短い仮眠であっても、その後一日の倦怠感解消に役立ちます。 また、短い仮眠をとることで、夜によりよい睡眠がとれるようにもなります。
- 運動をしてエネルギーを維持するようにしましょう。 例えば、外を散歩したり、トレッドミルの上を歩いたりしましょう。 軽い運動をする人々(ウォーキングなど)は倦怠感を感じることが少なく、よりうまく化学療法治療に対処できます。 運動によって倦怠感を管理する方法についての詳細は、 Managing Cancer-Related Fatigue with Exerciseをご覧ください。
- より元気があると思う日時に備えて作業や活動内容を計画しましょう。
- 恐れずに助けを求めましょう。 疲れの原因になるような作業やアクティビティは、家族や友達に手伝ってもらいましょう。
- 水分を十分とりましょう。 カフェインが入っていない水分を毎日グラス8~10杯(およそ240~300ミリリットル)ぐらい飲むようにしましょう。 水、水で薄めた(混ぜた)ジュース、または電解質を含む液体(ぺディアライト®、ゲータレード®、パワーエード®などのスポーツドリンク)などが良いでしょう。
倦怠感を管理する方法についての詳細は、Managing Cancer-Related Fatigueや、このセクションの始めにあるビデオをご覧ください。
吐き気、嘔吐、食欲不振
化学療法の中には、吐き気(吐くような感じ)や嘔吐(吐くこと)を引き起こすものがあります。 これは、化学療法が脳の中の吐き気を制御する部分、または口、喉、胃、そして腸内の膜細胞を刺激するからです。
管理方法
- 医療提供者の指示に従って、嘔吐抑制剤を服用してください。
- 毎日グラス8から10杯(およそ240から300ミリリットル)の水分をとり、脱水症状(通常より体の水分を失う状況)を防ぎましょう。 水、水で薄めた(混ぜた)ジュース、または電解質を含む液体(ぺディアライト、ゲータレード、パワーエードなどのスポーツドリンク)などが良いでしょう。
- カフェインを含む飲み物(コーヒー、お茶、ソーダなど)は避けましょう。
- 少量の食事を頻繁にとるようにしましょう。 以上を起きている間に行います。
- 脂っこい食べ物(揚げ物など)は避けましょう。
- 指圧療法を受けましょう。 指圧療法は伝統的な中国の鍼治療を基にした古代の医術です。 指圧療法では、体の特定の部位に圧力を与えます。 吐き気や嘔吐を減らすために指圧療法をどのように取り入れるかについての詳細は、Acupressure for Nausea and Vomitingをご覧ください。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください:
- 24時間以内に3〜5回吐いてしまう
- 嘔吐抑制剤を飲んでも吐き気が止まらない
- 液体を飲んでも、吐いてしまう
- めまいやふらつきがある(またはその可能性がある)
- 胸焼け、または腹痛がある
化学療法を受けている間に発生する吐き気や嘔吐を管理する方法についての詳細は、Managing Nausea and Vomiting や、このセクションの始めにあるビデオをご覧ください。
便秘
便秘とは、通常より排便回数が少ない、大便が硬い、排便がつらい、もしくはこれらすべてを経験する場合を指します。 これは、痛み止めや嘔吐抑制剤の副作用によく見られます。 便秘を引き起こす化学療法もあります。
管理方法
- 食物繊維を豊富に含む食べ物をとりましょう。 果物、野菜、全粒穀物、プルーン、プルーンジュースなどは食物繊維が豊富です。
- できれば、毎日少なくともグラス8杯(およそ240ミリリットル)の水分をとりましょう。
- できれば、散歩などの軽度の運動をしましょう。
- 必要であれば、市販の(処方箋が不要な)薬を服用して便秘を治療してください。 薬のひとつのタイプに、便を柔らかくしたり便通をよくしたりする便柔軟剤(Colace®など)があります。 もう一つのタイプの薬に、排便を助ける緩下剤(セノコット®またはMiraLAX®など)があります。 医療提供者がどのぐらいの量を服用すべきかお伝えします。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください:
- 排便やおならが2~3日ない
- 硬い大便の日が2~3日以上続く
- 排便がつらい日が2~3日以上続く
便秘を管理する方法についての詳細は、Managing Constipationや、このセクションの始めにあるビデオをご覧ください。
下痢
下痢とは、軟便、水様便、または通常よりも排便の回数が多い場合を指します。 化学療法薬の中には、下痢を引き起こすものがあります。
管理方法
- 毎日グラス8〜10杯(およそ240ミリリットル)の水分をとりましょう。 電解質(ゲータレード、ぺディアライト、だし汁(ブロス)、ジュースなど)と水の両方を含む飲料を飲むようにしましょう。
- 医療提供者から使用しないようにとの指導がない限り、市販のロペラミド(イモジウム®)などの止瀉薬を服用してください。
- 少なくとも12時間経過するまで、または下痢が止まるまでは便軟化剤または緩下剤を服用しないでください。
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避けたい食べ物:
- 辛い食物(ホットソース、サルサ、チリペパー、カレー料理など)
- 繊維の多い食物(全粒パン、全粒シリアル、新鮮な果物、ドライフルーツ、豆など)
- 脂肪分が高い食物(バター、油、クリームソース、フライドフードなど)
- カフェイン入り飲料(コーヒー、お茶、ソーダの一部など)
- 繊維質が少なく(精白パン、精白パスタ、白米、そして精白か精製された小麦粉)、柔らかく、薄味の食事を少量取るようにしてください。 食物は室温で取るようにしてください。
- BRATY( バナナ(B)、米(R)、アップルソース(A)、ホワイトトースト(T)、ヨーグルト(Y))ダイエットに従いましょう。
下痢を管理する方法や、食べて良い物と避けたい食べ物に関する詳細は、Managing Diarrheaをご覧ください。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください。
- 24時間以内に4回以上軟便や水様便があり、薬を服用しても改善されない場合
- 下痢を伴う腹部の痛みやけいれん
- 2日間BRATYダイエットに従っても、下痢が改善されない場合
- 肛門(便が出る肛門の開口部)か直腸(便が溜まる直腸)周囲の炎症が治らない場合
- 便に血液が混じる
粘膜炎
化学療法薬の中には、粘膜炎を引き起こすものがあります。 粘膜炎とは、口内、舌、または唇の発赤、腫れ、圧痛、痛みを指します。 最初の化学療法から3~10日後に症状が発症する場合があります。
管理方法
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4~6時間ごとに、あるいは必要に応じて口をすすぎましょう。 ノンアルコール・マウスウォッシュを使用するか、ご自身でソリューションを作りましょう。 ご自身でソリューションを作る際には、塩1~2ティスプーンと1リットル(4カップ)の水を混ぜます。
- マウスウォッシュかソリューションで口をすすぎ、 15~30秒間うがいをした後に、 液体を吐き出します。 マウスウォッシュかソリューションは飲み込まないでください。
- アルコールまたは過酸化水素が入ったマウスウォッシュは避けてください。 これらは痛みを悪化させる可能性があります。 アルコールや砂糖が入っていないマウスウォッシュ(Biotène® PBF Oral RinseまたはBetaCell™ Oral Rinseなど)を使いましょう
- 歯や歯茎には、柔らかい歯ブラシを使用してください。
- 酸性や塩分の多い食べ物、または辛い食べ物は避けましょう。
- 喫煙またはタバコ製品の使用は避けてください。
- 触って熱い食物は避けましょう。
- 唇をリップクリームで常に保湿してください。
- 口腔内冷却療法を利用できるかどうか、医療提供者に相談してください。 口腔内冷却療法は極度の低温で細胞を破壊する処置です。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください:
- 頻繁に口内炎が発生する
- 食べたり飲み込んだりする際に痛みがある
- どんなに水分をとっても、水分補給(体に水分を入れる)が十分でない
口内炎を管理する方法についての詳細は、Mouth Care During Your Cancer Treatmentをご覧ください。
免疫力低下
免疫力の低下は、好中球減少症による場合があります。 好中球減少症は、血中の好中球の数が減少したときです。 好中球は、体が感染症と戦うのを助ける白血球の一種です。 好中球減少症は、化学療法によって引き起こされることがよくあります。
好中球減少症があると、感染症のリスクが増加します。 次の説明は感染防止に役立ちます。 血中の好中球数が通常レベルに戻るまでこれらの手順に従います。
管理方法
- 病人に近寄らないでください。
- 石けんと水で20~30秒間以上手洗いをしましょう。
- 手のすべての部分にアルコールベースの手指消毒剤をつけましょう。 20~30秒間あるいは乾くまで両手をこすり合わせましょう。
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以下の場合に必ず手を洗いましょう:
- 食事前
- 細菌が付いているかもしれないものに触った後(お手洗いを使用した後、またはドアの取っ手に触った後、あるいは誰かと握手をした後など)
- 4%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)溶液入りの皮膚消毒剤(Hibiclens®など)を使ってシャワーを浴びます。 医療提供者の指示に従いましょう。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください:
- 100.4° F(38° C)以上の発熱がある
- 震えや悪寒がある
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次のような他の兆候や感染症の症状が発症し始める:
- 損傷部位、手術部位、またはカテーテル挿入部位の発赤、腫脹、熱感、化膿
- 新たな咳の発症
- 喉の痛み
- 排尿時のヒリヒリ感
感染症を防ぐための詳細は、 Hand Hygiene and Preventing Infection と Neutropenia (Low White Blood Cell Count)をご覧ください。
出血のリスクの増加
化学療法による治療後10日〜14日間は、血中の血小板数が少なくなっている場合があります。 血小板の数値の低下は、体の出血を止めたり、あざができにくくする機能を低下させます。
管理方法
- 歯や歯茎には、柔らかい歯ブラシを使用してください。
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以下の点に気を付けましょう:
- 切り傷、擦り傷、かすり傷を負う
- 誤って物にぶつかったり、物をたたいたりする
- つまずいて転ぶ
- 髭を剃る場合は、電気剃刀のみ使用してください。
- 怪我の原因になるようなアクティビティはしないようにしましょう。
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以下は使わないでください:
- 肛門座剤(肛門に挿入して溶ける固形薬剤)
- かん腸剤(肛門から直腸を刺激して排便を促す液体)
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください。
- 尿(おしっこ)、便(うんち)、吐瀉物(吐いたもの)、または咳をしたときに血液が混じる
- 非常に濃い色、または黒い大便が出る
- 原因不明のあざができたり、鼻または歯茎から出血がある
- 視力の変化
- ひどい頭痛、または体の片側に感じる脱力感などの脳卒中のあらゆる兆し
出血のリスクを減らす方法に関する詳細は、 About Your Low Platelet Countをご覧ください。
毛髪菲薄化、または脱毛
化学療法薬の中には、脱毛を引き起こすものがあります。 脱毛は通常、最初の化学療法による治療から2〜4週間後に始まります。 脱毛が起こっても、その化学療法の治療が終われば数ヶ月後に毛髪がまた生えてきます。 毛髪は違う色や毛質で生えてくるかもしれません。
管理方法
- 長髪の方は、治療が始まる前に短く切っておくと良いでしょう。
- 髪は2日から4日ごとに、シャンプーで洗い、ヘアコンディショナーで仕上げましょう。 シャンプーやリンスは、ベビーシャンプーか低刺激シャンプー、クリームリンスまたはヘアコンディショナーを使いましょう。
- 日焼け止めの入ったシャンプーとコンディショナーを使いましょう。 こうすることで、頭皮の日焼けによるダメージを防ぎます。
- 頭皮を日光にさらさないようにしましょう。また、夏場は頭を覆うようにしましょう。
- 冬は、頭部を帽子、スカーフ、ターバン、またはカツラで覆い、暖かく保ちましょう。 こうすることで、抜け毛をキャッチすることもできます。
- 睡眠時は、サテンまたは絹の枕カバーを使用しましょう。 これらは他の繊維と比べて滑らかなため、髪のもつれを減らすことができます。
- 頭皮冷却療法(冷却キャップを使用)を利用できるかどうか、医療提供者に相談してください。 詳細は、Managing Hair Loss with Scalp Cooling During Chemotherapy for Solid Tumorsをご覧ください。
癌治療中の脱毛に関する詳細は、Hair Loss and Your Cancer Treatmentをご覧ください。
神経障害(手足のしびれ感やうずき感)
化学療法の中には、手や足の神経に影響を与えるものがあります。 手指、足指、または両方にしびれ感やうずき感(多少のチクチク感)が起きることがあります。 これは化学療法の期間によって、一時的な場合もあれば、永久的な場合もあります。 医療提供者は症状を緩和するために薬を提供したり化学療法の投与量を変更したりすることができます。
管理方法
- 定期的に運動をしましょう(運動のルーチンを作成すると良いでしょう)。
- 喫煙している場合は、禁煙をしましょう。
- 大量のアルコールを飲まないようにしましょう。
- 寒い季節には手袋や厚手の靴下をはきましょう。
- ストーブ、オーブン、アイロンなどを使用しているときは、やけどをしないように気を付けてください。 以前のように熱を感じることができないかもしれません。
- 足にうずき、または麻痺があったら、頑丈な靴を履いて気をつけて歩きましょう。
- 鍼治療を受けましょう。 鍼治療は伝統的な中国医学におけるひとつの治療形態です。 体の特定部位に極細の鍼を用いて行います。 詳細は、About Acupunctureをご覧ください。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください。
- しびれ感やうずき感が悪化している
- 小さな物の扱いが難しい(ペンを持ったり、シャツのボタンをかけたりするなど)
- 手指、つま先、またはその両方の痛み、ヒリヒリ感、しびれ感、またはうずき感がある
- 歩くのに支障が出る、または歩くときに地面が感じられない
神経障害に関する詳細は、Neuropathic Pain、About Peripheral Neuropathy、および Managing Peripheral Neuropathyをご覧ください。
肌や爪の変化
化学療法によってはお肌に変化をもたらす場合があります。 化学療法を受けた肌、爪、舌、そして血管の色素が濃くなる場合があります。 また、皮膚全般に乾燥やかゆみなどの変化が起こる場合もあります。 爪が弱まったり、もろくなったり、割れたりすることがあります。
管理方法
- 手や足の十分な保湿に努めてください。 香料が入っていないクリームや軟膏(Eucerin®、セラヴィ®、またはアクアフォー®)を使いましょう。
- 直射日光は避けてください。 頭皮や体を太陽にさらさないようにしましょう。外出の際は、つばの広い帽子、淡い色のズボン、長袖のシャツを着ましょう。
- SPF30以上の日焼け止めを毎日使用しましょう。
- 爪は短くし、爪の端を滑らかに整えてください。
- ガーデニング、掃除、または食器洗いのときは手袋をはめましょう。
- 爪の冷却療法法を利用できるかどうか、医療提供者に相談してください。 爪の冷却療法法は手、足、または両方をアイスパックかアイスバッグで包んで行います。 こうすることで、化学療法を受けている間の爪の変化を減らします。
以下の問題が生じた場合は、医療提供者に連絡してください:
- 皮膚が剥けてくる、または水膨れができる
- 発疹がある
- 皮膚に新しく瘤または小さいこぶができた
- 甘皮(爪の底部にある硬くなった細長い皮膚)が赤くなって痛みを伴う
- 爪が剥がれる(爪床からはがれる)、あるいは爪の下から液体が漏れる
爪の変化に関する詳細は、Nail Changes During Treatment と Nail Cooling During Treatment with Taxane-based Chemotherapyをご覧ください。
低温感受性
低温感受性とは、手または足に感じる痺れ、うずき(多少のチクチク感)、または痙攣を指します。 唇や舌がヒリヒリしたり、あるいは喉や顎にけいれん(ピクピクする)を感じることがあります。 また、人によっては重くて動かしにくいなど舌にいつもと違う感覚を感じることがあります。 そのため、舌が回らなくなります。
低温感受性は寒い気候、冷たい食べ物や飲み物など、低温によって起こります。
低温感受性は通常、化学療法の間に改善するか、または無くなります。 治療の回数が増えるとともに、それにかかる時間が長くなります。
管理方法
- 冷たい食べ物や飲み物を避けましょう。
- 寒い日に外出する際は、冷たい空気を吸い込まないように、鼻や口を覆いましょう。
- 寒い日に外出する際や冷たいものを扱うときは、手袋をはめましょう。
- 温熱パッド、または温湿布は使わないでください。 以前のように熱を感じることができず、火傷をすることがあります。